杉山文夫は三人姉弟の末っ子で、新聞社論説委員の父敬吉とやさしい母しのの長男として平和で健康的な環境ですくすく育っていった。明るくスポーツ好きの少年で、将来はプロ野球の選手になるのが彼の唯一の夢だった。ある日姉和子のピアノのレッスン中にいたずらしようとしたとき突然文夫の肩に激痛が襲った。すぐ父と母につれられて病院にいったが、そこでの診断の結果ガンであることが判明した。子供がガンにかかるなどとは信じられない敬吉としのだが、冷酷に響く医者の言葉をくつがえすことはできなかった。平和な杉山家に突然襲いかかった病魔、しかも何も知らない文夫にどうこの事実を告げたらいいのか、父も母も、そして二人の姉悦子、和子も苦しみに迷った。
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