このままじゃ窒息しそうだ—— 宇和海と山に挟まれた小さな集落から、東京へ飛び出していった圭介。 ミュージシャンになるはずが大した成果も上がらないまま、 ズルズルと10年が経っていた。 ある日、田舎からの一本の電話が入る。 漁に出たまま行方不明になっていた兄の、葬式をあげることになったという。 帰郷を渋る圭介。 「ミュージシャンとして東京で成功している」と、皆に嘘をついていたからだった。 遅参した圭介を待っていたのは、兄の死で独りになった父、元妻ながら葬式を手伝いに戻って来た沙織。最後に兄を目撃したという同級生の洋、そして、洋の妹で足の悪い凪とふるさと蔣淵(こもぶち)の海だった。 圭介の帰郷をきっかけに、それぞれの思いがぶつかり始める。 凪いだ宇和海が、静かに広がっていた。
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